ホイールを装着できるよう、ピストフレームを加工してみる
前回の投稿はこちら▽
さて前回の投稿では、簡単にピストフレームの選び方をおさらいしてみました。で、今回からが実践編です。【なるべくコストを抑えてピストに乗りたい】という事で、必然的に選択肢に入ってくるのが「中古パーツ」です。
基本的にピストバイクで値段が高いパーツは、おおまかに
- フレーム
- ホイール
- クランク&ボトムブラケット
これが三強でしょうか。もっとも、こだわればこだわるほど、ハンドル、サドル、ステム、etc…。全部値段が高いものはあります。その為この限りではないですが。笑
何れにしても、自転車のすべての部品が組み付く「フレーム」と「ホイール、クランクなどの駆動系パーツ」は重要度が高い箇所な為、他パーツより値段は張ると思っていいでしょう。
今回コストを抑えるべく、まずは【フレーム】を中古でセレクトしてもらいました。さてそれは、オークションで落とした中古のNJSフレームでした。
※”NJS”に関連する過去ブログサイトの記事はこちら
中古フレーム、特に”NJS(競輪)”フレームは注意が必要
どんな商品もそうですが、中古品はある程度注意が必要です。自転車も同様です。
- パーツがさび付いて取り外しが出来なくなっていないか
- ヒビやゆがみなど、極端なダメージやサビは無いか
これはマストでチェックしなければなりません。まぁ多少のサビやへこみ程度は大して問題ではないですが、露骨にやばいモノは大体見た目だけでも分かりますよね。ぱっと見で分かりづらい注意点は、
- パーツがさび付いて取り外しが出来なくなっていないか
- フレームの「規格」が特殊ではないか
この二つです。パーツのさび付きは厄介です。そして、錆びてるだけならまだしも、外すことができないほどガッチリ部品が【固着】していると、パーツ交換やメンテナンスが出来ません。外すためには、あの手この手の方法がない訳でもないですが、いろいろ試してもダメな時もあります。これは事前に販売元に確認しましょう。
もう一点。特にNJS(競輪)のフレームによくあることですが、使用したい一般的なパーツの規格と「合わない」ことがあります。THE・ホイール取り付け問題です。
NJSフレームのホイール取り付け問題
なんでNJSにはホイール取り付け問題が起きるのか。これは、ホイールを装着する部分である「エンド金具」のサイズが現行品と違うからです。
全てのNJSフレームがそうではないですが、ちょっと昔のフレームや、選手の好みによるオーダーにより、「エンド金具」の幅が現行のホイールの主流サイズと違うことが原因です。
まず、現行のピストホイールの【ハブ】の一般的なサイズは、
- フロントハブ:軸の幅9mm、エンド幅100mm
- リアハブ:軸の幅10mm、エンド幅120mm
これです。なんのこっちゃ??という方が多いと思いますが、ひとまずこれはそのまま覚えてください。笑
これに対して、古いフレームによくあるパターンは
- フロントハブ:軸の幅8mm、エンド幅100mm
- リアハブ:軸の幅8mm、エンド幅110mm
となります。ざっくりいうと、古いフレームに使うハブの特徴は、今のものより細くて狭い!って感じです。その為、フレームとエンド金具も、その「細くて狭いホイールのハブ」に併せたつくりになっています。
※「ハブ」というのは、ホイールの真ん中の所です。下の画像の「2」のところです。
つまり、細くて狭いフレームに、広くて太い現行のホイールは入りません。物理的にね。
ハブの規格を表にするとこんな感じです。こっちの方が見やすいかもです。
新品や現行のフレーム用のハブ規格 | 中古、古いフレーム用のハブ規格 | |
---|---|---|
フロント(前輪)のエンド幅 | 100mm | 100mm |
リア(後輪)のエンド幅 | 120mm | 110mm |
フロントのハブ 軸の太さ | 9mm | 8mm |
リアのハブ 軸の太さ | 10mm | 8mm |
NJSフレームのエンド金具を「広げる」
先のように、NJSフレームはモノによっては「現行のパーツ(主にホイール/ハブ)」が使えないことがあります。これは困ります。古い規格のホイールとハブをわざわざ用意しないといけません。中古市場を探せば、あるのはあります。が、毎日気楽に乗れるホイールではありません。そもそも選択肢が少なすぎる。
そんなわけで、「入らないなら広げる」という方法があります。平たく言えば、フレームのエンド金具を削ります。
ただし、これは決して推奨していません。真似する場合は完全自己責任でお願いしますね。フレームを加工するわけですから。
先ず用意するものはこれです。
左から、
- スポンジヤスリ(仕上げに使います。紙やすりでも可。)
- ノギス
- ダイヤモンドヤスリ
です。
エンド幅を測る
いきなり削り始めるのではなく、先ずはエンドの幅を測ります。ノギスを使うと正確に測れますね。
ノギスは一本持っておくととても便利です。パーツやフレーム各部の外径や内径を測るタイミングって、思ったよりも多いですよ。
じゃぁ前後のエンド金具の幅を測ってみましょう。先ずフロントから。
測ってみたところ、8mmとちょっとです。8.2mmほどですね。これはもう少し削って、「9mm幅」にします。
よくよく見るとエンド金具の先端が既に削られた形跡がありました。おそらく、前の持ち主の方もフレームを削りかけて途中でやめたのでしょうか、と思われます。
お次はリア側です。
コンマ僅かですが、ほぼ10mmではあります。ただしリア側もフロント同様、削られていた形跡があります。エンド幅はなぜか120mmですが、軸幅はもともと10mmではなさそうです。
大きく削る必要はなさそうですが、部分的にガタガタになってます。表面をならして平らに仕上げるくらいはした方が良さげです。
エンド金具を削る
では削りましょう(何度も言いますが非推奨です。もっとも、鉄のフレームなら1mmや2mm程度エンド金具を削ろうが問題はないと考えます。個人的に、、ですよ。)
鉄を始め金属製品を削って加工する場合は、ヤスリなら何でもOK!ではありません。鉄鋼加工用のヤスリを使います。お勧めはダイヤモンドヤスリです。
いきなりガリガリ削るのではなく、少しずつ。表面をなぞるように削ります。
エンド金具のツメの部分を、平らにならすように削ります。ツメの部分は上も下も同じ力で、同じ回数でヤスリをかけるようにすれば均等に削れますね。
エンド金具|削った後の仕上げ
削っては測るをこまめに繰り返せば、そうそう失敗はしません。とにかく
- フロントのエンド金具幅:9mm
- リアのエンド金具の幅:10mm
になれば、ヤスリがけをやめましょう。あるいは、コンマ数ミリであれば、上記の数値になる前にやめてもOKです。
一旦図ってみます。
フロント側から。
9mm幅になりました。
次はリア。
こっちは元々がほぼ10mmでしたが、表面の凹凸を削ってならしています。これでほぼ完全に10mmです。
エンド幅が狙い通りに削れたら仕上げをします。スポンジヤスリの出番です。
スポンジヤスリは、表面をきれいに均一にするのにとても便利。名前の通り「スポンジ」なので、水を含ませて使う事が出来ます。いわゆる【水研ぎ】がしやすいです。また、柔らかくて肉厚なので、エンド金具の曲面部分まできれいに仕上げることができます。錆がひどい箇所の凸凹をならしたり、塗装面の塗装ムラを均一にしたいときにも重宝します。
スポンジヤスリを使い、なでるようにヤスリがけして、エンド金具を仕上げていきます▽
水をスポンジヤスリに染み込ませ、丁寧に仕上げます。これで一通り完了です。最後に、削ったエンド幅をチェックしてみましょう。ホイールを取り付けてみます。試しに取り付けるのは現行の完組ホイール。「GranCompe(グランコンペ)」です。
ばっちりですね。
リアのエンドは先端部がかなり削られていました。以前の持ち主の方は、フレームの状態から、おそらく10mmよりさらに太いトリック向けのハブなどを装着して、トリックピストのように組んでいたのかもしれませんね。
中古フレームはいろいろ厄介な部分もある一方、以前の持ち主がどのように使っていたのかな?などと考えるのも、ある意味で面白さの1つです。
次回:フレームの下処理
さて、さっそく非推奨な方法を紹介していますが、あくまでもお勧めはしていません。ちなみに、古いピストフレームに対応するリアハブの幅は「110mm」であることが多いですが、現行のハブの幅は「120mm」です。
つまり、古いフレームのリアエンドを片側5mmずつ広げれば、入らなくもないです。(鉄、クロモリのフレームに限ります。)
このように、古いピストフレームで鉄(クロモリ)材質のものであれば、ある程度無理やり作業すれば、現行パーツを取り付けられなくもない(何度も言いますが、おすすめしませんよ。笑)のです。
さて次は、諸々のパーツを組み付ける前の下準備。フレームの下処理をやっていきましょう。
miki